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番外編:ボックスフィギュア製作講座


はじめに

 最近は、シードヒロインズシリーズとか玩具店・模型店でボックスフィギュアが花盛りのように販売されていますね。普通は買ってきて箱を開けて説明書きや写真のとおり組み立てて終わりという方がほとんどだと思います(私も以前はそうでした)。ですが、このようなボックスフィギュアもちょっと手を加えるだけで見栄えが大きく異なりますので、私がいつも行ってる方法をご参考までに公開したいと思います。
 なお、以下に述べる方法はあくまでも元の製品を尊重しつつ、見栄えを良くすることをコンセプトとしておりますので、マニアックな改造とかは期待しないでください(笑)。あと、やること自体は別のページのガシャポン製作講座とあまり変わりませんが、こちらの方が試行錯誤の結果、ベターだと考えた手順に従っていますので、こちらの方がより見栄えのするものができるのではないかと考えております。


素材

 もうすぐシードヒロインズ5も発売されますので、同じシリーズということでシードヒロインズ4(写真1)のラクス・クラインを素材に選んでみました。
 このシリーズは出来がいいし、品質管理も安定しているので、そのまま組んでも充分に見れますが、そこに一工夫加えてみます。
 箱には写真2のように入ってました。ビニール袋から出すと写真3のようになってます。

(写真1) (写真2) (写真3)
シードヒロインズ4 製品外観 箱から出した状態 ビニール袋から出すと


下準備

 全てのパーツをビニール袋から出して、まず分解できる範囲で分解してみます(写真4)。
 分解といっても、指で引っ張って外せる範囲で構いませんから。分解できない部分はそのまま置いておいてください。へたに外そうとすると塗装を傷つけてしまう可能性があります。
 分解が終わると、、鍋にお湯を沸騰させて、そこで3分間ほど煮ます(写真5)。
 写真はラクスの他、ミーアやメイリンも一緒に煮てます。パーツの多さは気にしないでください(^^!
 これによって、パーツの変形が直りますし、表面に残った離型剤等の薬品を落とすことも出来ます。
 あと、噂によると、どうやらお湯で煮ることによって変形を直すほかに、材質を強化する効果もあるみたいです。
 あまり煮すぎると塗料が変質するとの噂もありますが、私が行った範囲ではそのようなことはありませんでした。
 煮たあとは、キッチンペーパーの上で冷却・乾燥させてください。下に敷くものはキッチンペーパーがお勧めです。ティッシュだと繊維くずが付着してこのあとの工程において邪魔になる可能性があります。

(写真4) (写真5)
分解状態 お湯で煮ます


パーティングライン消し

 このフィギュアでは、足の真ん中にくっきりとパーティングラインが入っています(写真6)。パーティングラインとは、型に樹脂を流し込んで成形する際に型の継ぎ目の部分に生じる線のことです。これが残っているとせっかくの脚線美が台無しなので耐水ペーパーで削り落とします。この工程が一番のポイントでしょう。この作業をするとしないとでは仕上がりが大きく異なります。
 耐水ペーパーはホームセンターや模型店で購入できます。一部例外はありますがザラザラした面がダークグレーのものです。間違えて肌色っぽいやつを買わないでください。あれは耐水でないので後述する水研ぎが出来ません。
 耐水ペーパーは、400番で荒く削ってから800番で仕上げるのが適当かと思います。この際注意するのは必ず水研ぎでやってください。水研ぎとは、サンドペーパーをかける際にサンドペーパーを水で濡らして対象物に擦りつけることをいいます。水を付けずに空研ぎすると、耐水ペーパーの目詰まりが激しいだけでなく、素材のPVC(ソフビ)の性質により毛羽立った感じになってしまい、仕上がりが汚くなります。
 このフィギュアは足が一番目立つパーティングラインが入ってますが、腕なども同様に処理しておくことをお勧めします。
 写真6が水研ぎ前、写真7が水研ぎ後です。この写真では若干分かりにくいので、写真をクリックしていただくと別窓で大きな写真をご覧いただけます。

(写真6) (写真7)
パーティングライン修正前 パーティングライン修正後


表面処理

 ボックスフィギュアやガチャポン場合、素材のPVC(ソフビ)の特性で、肌にへんなテカリが出ます。そこで、ドールの仕上げにも使用した、(株)GSIクレオス製のMr.スーパークリアつや消し(写真8)を吹き付けます。定価で700円ぐらいだったと思いますが、1本で3体分ぐらい使えます。これを吹き付けると変な艶がきえて落ち着いた感じになり、肌の色も若干色白になるように思われます。
 もっとも、逆に言うときれいな艶も消してしまうことにもなるので、シードヒロインズ・ラクススペシャルのドレスバージョンのラクスみたいに、きれいなパール塗装がしてあるようなフィギュアでは注意してください。このような場合には、肌のパーツなど、つや消しになってもいいパーツだけに吹き付けてください。つや消しにしたい部分とつや消しにしたくない部分とが混在するパーツは、つや消しにしたくない部分にマスキングテープやマスキングゾルを使ってマスキングしてください。

 この記事みたいなめんどくさいことは嫌だという人でも、組み立てたあとにこのスプレーを吹き付けてみてください。これだけでもやってみる価値はあるとおもいますよ。

(写真8)
ミスター・スーパークリアー・つや消し


 では具体的な手順です。まず、写真9のように各パーツに塗装しやすいように持ち手を付けます。私は爪楊枝に両面テープを巻き付けてそれにパーツを固定しています。
 スプレーを吹き付けるときのこつとしては、パーツの前にスプレーノズルを持っていってノズルを押すというよりも、ノズルを押してあらかじめ塗料を噴射しているところに、パーツを移動させる方が上手くいきます。ちょうど塗料の霧にパーツをくぐらせるような感じでしょうか。吹き付ける量としてはパーツの表面がまんべんなく湿っていて塗料が垂れる一歩手前ぐらいがベストです(って、その加減が難しいんですけどね(^^!)はじめのうちは塗料がもったいないような感じがしますが、コツを覚えると無駄なくきれいに吹き付けられるようになりますので頑張ってください。なお、上記の製品は油性ですので換気にはくれぐれも注意してください。一応、水性のつや消しスプレーもあるのですが、吹き付けたあとの皮膜の強さや経年変化などを考えると油性の方がお勧めです。ただ、体質などの関係からどうしても油性を使うのが嫌だという方は素直に水性を使ってください。
 あと、このような表面処理剤に限った話ではありませんが、スプレーで塗装をするときには、できるだけ湿度の低いときを選んで行ってください。空気中の湿度が高いと、空気中の水分とスプレー塗料とが反応してカブリと呼ばれる塗装が白っぽくなる現象が生じますから。
 パーツは吹きつけが終わると写真10のように乾燥させておきます(あまり関係ないけど、100均って爪楊枝とか綿棒とか洗濯ばさみが安く買えるのでホビー好きには便利なところですねぇ)。

(写真9) (写真10)
爪楊枝で持ち手を付けます 吹きつけ後の乾燥状態


 シードヒロインズなどのボックスフィギュアには、はめ込むためのタボという出っ張りがあります。ただ、そのタボはたいてい大きすぎます。メーカー側のきちんと組み立てられるようにとの配慮でしょうが、はめ込みにくかったり、他のパーツと干渉したり、パーツの合いが悪くなる原因でもあります。それに、後述のように瞬間接着剤を使って組み立てる分には、タボが小さくても不都合はありません。
 そこでタボを少し切断します。シードヒロインズの場合は、だいたい目安は通常の半分ぐらい(写真11)。ただ、これもケースバイケースなので、あまり緩くならない範囲で調整して切断してください。使用する道具はカッターです。私の場合は使いやすいのでもっぱらアートナイフで行っています。この作業はカッティングマットの上でやる方が力が入れやすいので、きれいに安全にできます。第一、机を傷つけませんしね。
 このようにして他にも合いの悪い部分のタボを切断します(写真12)。

(写真11) (写真12)
タボの切断 タボの切断 その2


 タボを切断したために強度が不足するのを補うため、及び、普通でも補強を要する場合があることから、組み立てには瞬間接着剤を用います。
 瞬間接着剤は、普通の文房具店で売っているもの(アロンアルファ等)で十分ですが、私が愛用しているのはウエーブ製の模型用瞬間接着剤「×3Sハイスピード」(写真13)です。3本入り、ノズル2本、乾燥剤入りとお得な上に、流動性がよいためボックスフィギュアの製作には最適です。

(写真13)
瞬間接着剤


 瞬間接着剤を使う際にぜひとも用意したいのはノズルです。たいてい瞬間接着剤には付属していますが、100均で売ってるものにはついてませんし、付いていても太くて使いにくかったりするので、そういう場合は模型店で売ってるものを別に買ってきます。写真14は行きつけの模型店で買ったものです。20個入りで210円とお得♪ 中に入ってるのは写真15のようなものです。

(写真14) (写真15)
別売ノズル ノズルのアップ


 このノズルを瞬間接着剤の容器の先端に取り付けて用います。ノズルがはめ込みにくかったり、長すぎたりする場合は適宜切り取って使用してください。

(写真16)
ノズル取り付け状態


 使用方法はというと、予めパーツを組み立てておいて、その隙間に毛細管現象を利用して染み込ませるような感じで行います(写真14)。くれぐれも付けすぎにはご注意ください。はみ出すと白くなったりしてみっともなくなりますし、隙間をつたって指とパーツとが合体してしまったりもします(体験談です(笑))。
 あと、染み込ませるときは、そのノズルを当てる部分自体を目立たない位置にするなど工夫してみてください(写真15)。

(写真14) (写真15)
隙間に染み込ませるように使用 染み込ませるのは目立たない位置で


 このように組み立てていくと、だいたい最後に上半身と下半身との接着という工程が来ます(写真16)。ただ、これはあくまでも一般的な場合です。フィギュアによっては組み立て順を考えなければならない場合もあります。例えば、シードヒロインズ3のフレイの場合、上半身と下半身との接着の前にスカートを履かせておかないとあとからスカートを履かせることが出来ません(スカート履いてない姿もいいじゃないかという人はともかく(笑))。組み立てる順番には気をつけてくださいね。

(写真16)
上半身・下半身の完成状態


 で、ここで少し問題となるのが上半身のスカートの奥の形状(写真17)。このようにタボの受けが奥まったところにある場合、瞬間接着剤にノズルを付けて接着するという方法が採れないのです。まあ、やってやれないことはないでしょうが、余計な部分に接着剤があふれて失敗する可能性も高いので、ここでは別の方法を用います。

(写真17)
スカートの中のタボの受け側


 この場合使うのは、ゼリー状瞬間接着剤です(写真18)。これをスカートの奥の受けの部分に必要なだけ出しておいて(より丁寧に行うなら、爪楊枝等で接着面に広げておいてもいいでしょう)、その後に下半身のパーツを押し込むようにして合体させます。ゼリー状瞬間接着剤はすぐにはくっつきませんから、焦らずゆっくり行ってください。

(写真18)
ゼリー状瞬間接着剤


 このようにして完成させたのが下の写真です。写真ではストレートに組んだのと全然違わないように見えますが(^^! 実物を見比べてみると肌の質感とかが明らかに違いますので皆さんも挑戦してみてください。
 右の写真はオマケで、一緒に作ったミーア・キャンベルとラクス・スペシャルのドレスバージョンを並べて写してみました。

完成写真
ラクス・クラインの完成写真 ミーア・キャンベル、ドレスバージョンと一緒に撮影

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